会長就任のご挨拶

2023年4月6日

日本農作業学会長 大谷 隆二

 この度,2023年春季大会総会で会長に選任されました大谷隆二です。コロナ禍の収束が見え始めた今春季大会は,オンラインと対面のハイブリッドで開催されました。ポスターセッションでは、栽培や土壌肥料の研究発表に対し、農業機械が専門の会員からの質問が,逆に農業ロボットの発表には、栽培や土壌肥料,さらには鳥獣害が専門の会員からの質問があるなど熱心なディスカッションが行われていました。専門分野の異なる会員が現場で起きている問題を議論し合えるのは農作業学会ならではの光景です。また講演会2日目の最後の講演でも,会場を埋め尽くすほど多くの会員が聴き入り,予定時間一杯まで熱心な討議が行われていました。GNSSや電子機器などスマート機器を使った農作業が急速に普及し始めている現在,農業現場のホットな講演や議論は迫力があります。

 日本農作業学会は1965(昭和40)年に「日本農作業研究会」として設立されました。農業基本法が1961年に制定され,日本農業の機械化がこれから飛躍的に進展する時代でした。60年後の現在,デジタル革命が農業においても猛烈な勢いで進んでいます。経営規模も,10ha以上の経営体がわが国の全耕地面積の55%以上を、50ha以上の経営体が25%以上を耕作するようになり,担い手への農地の集積で規模拡大が進行しています。一方で,肥料の高騰や飼料の高騰が農業生産に大きな影響を及ぼしており,肥料や飼料を海外に頼ってきた日本農業の生産方式を根本的に見直す必要に迫られています。

 農業はもともと百の姓(仕事)をする職業だと,まだ駆け出しの研究者の頃に上司に教えてもらったことがあります。その後,大規模経営体の営農にどっぷり浸かった実証試験を行う機会に恵まれ,その意味が分かりました。農業は栽培や農業機械のスキルだけでなく,肥料,雑草,経済,気象,さらには土木など,まさに百の姓(仕事)を駆使しなくてはなりません。これは農業の醍醐味でもあり,農業ほど楽しい産業はないとも思いました。農業現場の問題を本当に解決するためには百の姓が必要で,日本農作業学会は,このような農業の面白さや楽しさを知っている人達の集まりだと思います。

 農作業学会に行けば,新しくて面白い発見があるという,研究者はもとよりメーカーや生産者などいろんな人が集まる学会にしたいと思います。農業の未来を切り拓けるような元気で活力のある農作業学会を目指したいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。

過去の会長挨拶 

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