人と環境に優しい農業生産の合理化を目指して
日本農作業学会とは
日本農作業学会は、農作業合理化の研究を進め、その技術普及と会員相互の親睦、協力を図ることを目的とし、農作業にかかわる学術や技術を発展させることにより、豊かで魅力的な農業と農村の実現と、安全な食料の確保および持続的視点から地球環境保全に配慮した生産環境作りに貢献するため、1965(昭和40)年に「日本農作業研究会」として設立され、1986(昭和61)年に現在の「日本農作業学会」に移行しました。
現在は、日本学術会議の協力学術研究団体に登録されているのに加え、わが国の農学関連学会の多くが参加している連合体日本農学会や日本農業工学会にも加盟しています。
多様な会員構成と研究対象
会員は、農業にかかわる大学や各種試験研究機関・企業の研究者、農業技術や農村生活改善に携わる普及関係者、農業者などで構成されています。
専門分野は近代農業が営まれる場である管理生態系を中心に、作物・園芸・畜産・林業・機械・施設・経営・労働科学・人間工学・情報利用など、農業や人間科学に関する広範な領域にわたり、各人の専門を尊重しつつ、互いに連携して農業技術の開発や普及を目指した、農作業の合理化や安全で快適な作業技術の確立に向けた活動を行ってきました。
さらに、近年は、さまざまな環境問題が顕在化する中で、環境と調和のとれた農作業システムづくりの研究も数多く行われています。
活発な活動
本学会の主要な活動は、学会誌の発行と年に2回の大会で、学会誌は年4回発行し、論文は電子ジャーナルとしてJ-Stage上にも公開しています。
春の大会は、学会活動の基本事項や年次計画を決める総会と、学会員による研究成果発表の場である講演会がセットで行われ、最新の研究成果発表と情報交換の場として機能しています。講演会は、4~5課題のセッションごとに総合討論の時間を設け、講演課題について議論を深化させる仕組みをとっています。
秋の大会は、全国の農業現場をまわりその時々に、課題を抱えている現地や、先進的な取り組みの行われている現場を実際に見ながら実態に即した課題をテーマに、シンポジウム形式で開催しています。2005年は宮崎県で「大規模農業生産法人における農作業の実態と課題」、2006年は大阪府で「農作業のバリアフリー・ユニバーサルデザイン化技術」および「大豆の播種作業技術の課題」、2007年は北海道で「超省力畑作生産システムを目指して」、2008年は千葉県で「有機農業の現状と課題」、2009年は兵庫県で「地域複合経営の現場を体験する」、そして2010年は福島県を会場に「人と環境にやさしい果樹生産を目指して」というテーマで現地視察、研究成果の紹介と解決に向けた具体的な方策の検討が行われました。これとは別に、全国に7ブロックある支部会も逐次開催されています。
また、CIGR(Commission Internationale du Geine Rural, 国際農業工学会)での講演やセミナーの企画、アメリカ・タイ・インドネシアでの海外セミナーの開催など、国際的な活動も積極的に取り組んでいます。
出版活動の中で、本学会の特徴を表しているのが農作業データの収集・公開です。この農作業データ集は、1982(昭和57)年~1996(平成8)年に主に穀物を対象に作成され、新技術導入のための指針づくりや作業体系の構築の基礎データとして活用されてきました。しかし、近年は野菜作などの分野での機械や技術が創出されてきましたので、本学会では新らたな見地からのデータ集を作成し、農業技術の一層の発展と普及を図ることを目的に、このデータ集をインターネット上で公開しています。現在、水稲、麦、雑穀、いも、豆、飼料作物、果樹、工芸作物、野菜、花きなど約150件の農作業データが公開されています。
(小林恭 元副会長による学会紹介を一部改)