2009(平成21)年度 秋季大会
現地見学会・検討会 -地域複合経営の現場を体験する-
今大会の現地世話人として準備にあってきました古東英男氏におかれては、9月6日御身罷りとなりました。
謹んで御冥福をお祈りいたします
秋季大会への誘い
兵庫県南あわじ市において「地域複合経営の現場を体験する」というテーマで現地見学会ならびに検討会を企画しました。
同地域へは、2000(平成12)年度春季大会の見学会で訪れています。やはり秋の同地域も見ておいて頂かないと、二毛作、三毛作による水田の高度利用を垣間見たことにもなりません。
2000(平成12)年度春季大会のテーマセッションで特別講演をお願いした故古東英男氏と相談して、下記のように計画・準備を進めてきたところです。
- 参考ページ
-
- 「作付けローテーションと複合の力桶」
- 「タマネギ収穫の機械化」
- 「地力の維持と病害対策」
- 「機械と設備・施設」
地域複合経営、そして二毛作、三毛作による水田の高度利用という、生産における農作業について議論を深めたいと思います。なお、これを機会に「農業経営における農作業学の意味」を改めて議論できればと思います。
テーマ
地域複合経営の現場を体験する(二毛作、三毛作による水田の高度利用)
開催地
開催日・日程
2009(平成21)年11月19日(木)・20日(金)
1日目 | 新幹線新神戸駅改札階下の1F駅レンタカー窓口前 11:30集合 (翌日の同駅解散まで全行程、貸切バスでの移動となります) 現地見学、ホテルにて意見交換会、懇親会 |
---|---|
2日目 | 現地見学 14:00 新幹線新神戸駅解散 |
大会参加費
11,000円(交通費及び懇親会費、当日徴収いたします。)
内訳:
交通費: 4,000円(見学バス費用=JR新神戸駅から現地及び帰路JR新神戸駅解散まで。※車での参加の場合不要)
懇親会費: 7,000円(飲み物代込)
参加申込要領
電子メールの場合:
メールアイコン をクリックして庄司浩一(神戸大学)まで、以下の事項を本文に記入し送信してください。
氏名、連絡先電話番号・ファックス番号、住所、(勤務先)、車での参加の有無、その他問い合わせ事項等。
申込みを受け取りますと、確認メールを送りますので、これで受付確定となります。
<Webでの申込は、今回設定しておりません>
郵送の場合:
往復はがき、または返信用はがきを同封のうえ、以下の事項をお知らせください。
氏名、連絡先電話番号・ファックス番号、住所、(勤務先)、車での参加の有無、その他問い合わせ事項等。
送付先: 〒657-8501 神戸市灘区六甲台町1-1 神戸大学農学研究科 庄司浩一
申込みを受け取りますと、返信はがきを送りますので、これで受付確定となります。
参加申込期限
2009(平成21)年11月10日(火)
中型バス利用のため35名で締め切らせていただきますので、できるだけお早めに申込願います。
<会告では40名としておりましたが、バスの手配の関係で35名に変更になりました。>
宿 泊
南淡路ロイヤルホテル(鳴門海峡を眺望、温泉付)
宿泊料: 1泊2日朝食付(ツインのシングルユース) 11,550円(税・サ込)
宿泊申込
各自で直接電話予約してください。予約の際は、必ず「日本農作業学会への参加者」と告げてください。
南淡路ロイヤルホテル: Tel:0799-52-3811 または 0799-52-3011
なお、メールや郵送よる参加申込だけでは、宿泊予約は発生しませんのでご注意願います。
問合せ先
メールアイコン または をクリックするか、Tel:078-803-5913 庄司研究室にご連絡ください。
詳細日程
1日目 |
|
---|---|
2日目 |
|
意見交換会
今回の「現地検討会」は例年のようなシンポジウム形式ではなく、懇談会としました。そして懇談の延長として懇親会を設定しています。懇談をとおして「営農と農作業」の問題点を掘り下げたいと考えます。
視察対象及び農作業
- 育苗センター(タマネギの育苗)
- 集荷施設・予冷施設(大型冷蔵庫とそこでの作業、冷蔵タマネギの出荷等)
- ほ場現場(新規基盤整備とコンクリート畦畔、パイプ配管と排水事業、早稲跡の早獲りレタス、グリーンボールの収穫等)
- 基盤整備以前の耕地の状況
- 農民車の製造工場
見学のポイント
土地の集約的利用方法や機械の有効利用、農作業の現場的工夫など農業者の姿勢ないし考え方を、現地において実感していただく。
秋季大会へのメッセージ
故古東英男氏の未刊行原稿「日本農業の再生(自給率50%をめざして)」から「はじめに」を、同氏からのメッセージとして以下に引用します。なお、この原稿のダイジェストを大会当日配布の予定でした。
「牛は追う、馬には乗る」 言葉は理解できても実際にやってみなければ本質はわからないものだ!それが農業というものだと思う。かつて私が実践してきたことや体験してきたことを基軸にその方策を整理し提言してみよう。
- 何と言っても自給率の向上を図らねば成らない
- 農業に自信と誇りと夢を持たせ「心豊かな営農と生活」が営まれる地域杜会を築かねばならない
- 生産者と消費者が「安全と安心」という絆で結びついた状態を作り上げ「安定供給」できる産地を作り上げなければならない。そのために成果目標数値を決めポジションと責任を持って手順を間違うことなく行政も生産者も消費者も取り組まねばならない。その金額は1品目1億円であろう
- 商業者や商業資本に頼ることは決して行ってはならない。商業資本に農村や農業・農政までもが食い物にされたり振り回されたりしないようにしなければならない。彼等の貪欲な利益追求はどこかで歯止めをかけなければならない
- 地域営農の実践には現場で指揮を取ってくれる人、組織再編やその事務局を担当してくれる人、その地域の技術開発や情報を咀嚼してくれる人、生産物をお金に換える方法(市場対応や付加価値を高める)を担当してくれる人、これら扇の要役を担ってくれる営農指導員を得ることによって地域農業の再生が成されるものと確信する
- どんな立派な理念法を作っても予算化をしても10年を過ぎると破行的拡大を繰り返している。その主原因は受け皿である現場監督がいないからである
- 世界中に100年に一度の風が吹いているといわれる。アメリカ一極集中の覇権型交易は世界中に金融危機をもたらした。ウルグアイラウンドはいったい何をもたらしたのか、そして今またWTO的グローバル化を復活させようとしている中で日本は「NO」と言える食糧自給権(生存権)外交の展開を図らねばならない。食料、農業は総ての生きものの基本である。明治維新の廃藩置県や農地改革に匹敵する日本型の食・農革命を起こして対抗せねばならない
以上のように示された各観点に立って実証的に分析した上で同氏は、「農業を農業の論理だけで説く時代は30年前に終わったと思う。今やグローバル化の中で農業は先の見えないまま工業論理の中に埋没してしまったといえる。日本農業の指導者の多くは「自らの命は自分たちで守る、地域の農業は地域の技術者と村の長と篤農家(精農家)を先頭に守り抜く」という哲学を忘れてしまったようだ。日々移行く社会の中にあって今後の農業は技術者を育て技術開発を行い「食料」という価値を生み出していかねばならない。論理を形にできるのは技術者だけである。技術的に勝れていれば負けることはない。つねに技術開発を続けていくことである。」(前出、第5章)と結論付けます。そして、地域複合営農という場で実践してきた具体的な事例が述べられていますが、大会当日の現場見学と検討会もこの結論をベースとして説明が進められます。
実践の基調を別の観点から述べると、「安定した収入を得るため、個々の営農の方程式そして地域共通の方程式をいかにして得たか」に尽きると思います。農作業研究は、この「営農の方程式」に近接したところに立脚しているといえましょう。意見交換をとおして「農業経営のツールとなりうる農作業学研究の成果を検証する」というようなとらえ方、あるいは「農業経営における農作業学の意味」を改めて問い直す機会となればと願っています。
- 故 古東 英男 氏
- 同氏は、知る人ぞ知るという方でありますが、少し紹介しておきます。営農指導員制度の初年度に認定されたお一人で、淡路島の三原郡において地域複合営農を先頭に立って推進し、また、中核的な営農者としてそれを実践されてきました。第44巻第1号の会告にも載せておりますが、古東英男『地域複合営農の実践』(農林統計叢書22);農林統計協会(2,100円)は、1997年出版で1998年日本農業経営学会賞(実践記録賞)を受けた著作で、今なお刊行されているように、地域複合営農への今日的視座を示していると思います。参考まで、ぜひ一読を薦めます。
(秋季大会へのメッセージの文責、活動推進委員長・堀尾)