2024年度日本農作業学会学術奨励賞選考結果
日本農作業学会学術賞選考委員会(小松﨑将一委員長,委員3 名,幹事1 名)は,学会誌58 巻1 号の会告に基づき会員から推薦のあった候補業績について,2023 年10 月から11 月にかけて推薦理由及び研究業績などの書類をもとにオンラインにて審査会を行なった.その結果,以下の2 業績について,選考委員会は一致して,日本農作業学会学術奨励賞を授与するのに適当であるとの結論に達した.受賞者,受賞業績及び受賞理由は以下の通りである.
2024年度日本農作業学会学術奨励賞
受賞者(所属):阿部佳之(農業・食品産業技術総合研究機構畜産研究部門)・住田憲俊(農業・食品産業技術総合研究機構畜産研究部門)
受賞業績: 子実トウモロコシの安定多収生産に資する収穫技術の開発
受賞理由:
阿部会員と住田会員は,農林水産省の委託プロジェクトである「畜産生産の現場に濃厚飼料を安定・低コストに供給できるシステムの開発」に参画している.彼らは,国産濃厚飼料の生産拡大に対応した技術開発に取り組んでおり,トウモロコシ子実などを用いた飼料の調製・保管技術を開発している.特に,トウモロコシ子実の収穫に関しては,大型機の導入が困難な水田転換畑で中型機を使用することで効率的な収穫体系を構築し,作業能率を向上させている.さらに,子実水分30%での収穫が可能なコーンヘッダを装着することで収穫時期を早め,生産量の拡大と収穫作業の効率化を実現している.また,乾燥・保管技術においてもエネルギー使用量を考慮した調製技術の検討が行われており,成果は広く報告されている.これらの成果は,自給飼料利用研究会で報告され,今後の技術普及が期待されている.また,全国20 か所以上で実証事業が実施されており,この研究の成果も活用される見通しである.
以上のことから,本研究業績は日本農作業学会学術奨励賞を授与するに相応しい優れたものと判断した.
受賞者(所属):川原田直也(三重県農林水産部)
受賞業績: 水田転換畑における小麦,大豆の低収要因の解明
受賞理由:
主食用米の需要が減少する一方で,小麦や大豆の国産需要が高まり,水田の高度利用が重要視されているが,水田転換畑における小麦や大豆の生育は不安定である.そこで,川原田会員は,三重県の50 ヶ所以上の水田転換畑で小麦と大豆の生育や土壌環境を調査し,低収要因を解明し,改善策を提示した.小麦では,収量に影響する要因を調査し,土壌状態の改善が必要であることを示した.大豆でも同様に,生育や収量に影響を与える要因を調査し,カメムシ被害や土壌状態が収量に影響することを示した.これらの成果を元に,技術マニュアルが作成され,県内の農業指導に活用され,低収要因の改善に取り組む面積が2,500 ha以上に拡大している.さらに,土壌状態と排水性の同時改善を目指す技術開発も進められている.
以上のことから,本研究業績は日本農作業学会学術奨励賞を授与するに相応しい優れたものと判断した.
2024年度日本農作業学会優秀地域貢献賞選考結果
日本農作業学会優秀地域貢献賞選考委員会(小松﨑将一委員長,委員3 名,幹事1 名)は,学会誌58 巻1 号の会告に基づき会員から推薦のあった候補業績について,2023 年10 月から11 月にかけて推薦理由及び研究業績などの書類をもとにオンラインにて審査会を行なった.その結果,以下の業績について,選考委員会は一致して,日本農作業学会優秀地域貢献賞を授与するのに適当であるとの結論に達した.受賞者,受賞業績及び受賞理由は以下の通りである.
受賞者(所属):稲野一郎(北海道立総合研究機構中央農業試験場)
受賞業績: 北海道における大規模畑作及び転換畑における農作業技術開発
受賞理由:
稲野会員は,ロボットトラクタの研究と子実トウモロコシの栽培研究に取り組み,地域での収益向上と生産効率向上に貢献している.北海道内では子実トウモロコシの栽培が増加し,令和3 年度には800 ha で栽培されるに至っている.また,土壌物理性の影響や作業の省力化に関する研究を通じて,北海道の農業において作業効率向上や燃料使用量削減に貢献した.さらに,かぼちゃ収穫,種籾収穫,農薬使用低減,小麦品質保持など,多くの技術開発に中心的な役割を果たし,地域の農業生産向上に寄与している.これらの成果は学会や学術誌で発表されている.
以上のことから,本業績は日本農作業学会優秀地域貢献賞を授与するに相応しい優れたものと判断した
2024年度日本農作業学会功績賞選考結果
日本農作業学会功績賞選考委員会(深山大介委員長,委員3 名,幹事1 名)は,学会誌58 巻1号の会告に基づき会員から推薦のあった候補業績について,2023 年10 月から11 月にかけて推薦理由などの書類をもとにオンラインにて審査会を行なった.その結果,以下の業績について,選考委員会は一致して,日本農作業学会功績賞を授与するのに適当であるとの結論に達した.受賞者,受賞業績及び受賞理由は以下の通りである.
2024年度日本農作業学会功績賞
受賞者: 加藤盛夫(筑波大学)
受賞業績: 学会の庶務活動に対する貢献
受賞理由:
加藤盛夫会員は2011 年に学会に入会し,2012年度春季大会事務局長として斬新な大会運営を実現させ,2019 年度~2022 年度の2 期にわたり総務委員会の庶務幹事として学会の運営を管理し,総務委員長を補佐して学会運営を取り仕切った.2012 年度の春季大会では,東日本大震災の影響を受けた状況下で一般公開シンポジウムを企画し,学会員や一般の人々に放射能汚染と農作業の関連について理解を広めた.2019 年度~2020年度は学会の運営方法が変更され,COVID-19 の流行にも対応しながら運営を行い,2021 年度~2022 年度も新型コロナウイルスの感染拡大に柔軟に対応し,学会運営を取り仕切った.加藤会員は学会の新しい運営方法を導入し,リモート理事会の開催や会則・規約の修正など,多くの新しい運営方法を推進した.
以上のことから,本功績は日本農作業学会功績賞を授与するに相応しい優れたものと判断した
2024年度春季大会優秀学生賞選考結果
日本農作業学会2024年度春季大会優秀学生賞選考委員会(鈴木尚俊委員長、他選考委員4名)は,学会誌58巻4号の会告に基づき学生会員から講演申込があった6名について,2024年3月23日に開催された春季大会講演会1日目のポスター発表をもとに審査を行った.その結果,選考委員会は一致して,1名の候補者に優秀学生賞を授与することが適当であるとの結論に達した.受賞者,受賞講演および授賞理由は以下の通りである.
2023年度春季大会優秀学生賞
受賞者: 井上 渉(茨城大学)
受賞講演: ソーラーシェアリング下での不耕起有機ダイズ栽培における3条間不耕起除草機の活用による除草作業の効率化と収益性
受賞理由:
本研究は「みどりの食料システム戦略」を念頭にエネルギー、不耕起による炭素貯留が期待できる不耕起大豆栽培における試作除草機を用いた除草作業の回数や雑草量と収量の関係性及び作業性、更には収益性についても検討している。時流に沿った研究であり、目的意識の高さに加え、説明も的確であったことから受賞に値すると判断した.今後はソーラーシェアリングによる生育差やエネルギー収支の観点も加えて研究を進め,農作業研究誌への論文投稿とともに,更に研鑽を重ね,当該研究分野のイノベーションを担う人材としての発展を期待する.
深見公一郎会員が2024 年度日本農業工学会賞受賞
2024年5月12日に,本学会から推薦した深見公一郎会員が2024 年度日本農業工学会賞を受賞しました.
鈴木尚俊,鹿内健志 会員が日本農業工学会フェロー顕彰
2024年5月12日に,本学会から推薦した鈴木尚俊会員,鹿内健志会員に日本農業工学会フェローの称号が授与されました.