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第50巻 2015年(平成27年)発行

第50巻第4号(通巻第165号) 平成27年12月(オンライン版:平成28年6月)

  • 会告
    • 平成28年度春季大会(第51回講演会・第52回通常総会)開催について
    • 日本農作業学会 平成28年度春季大会におけるテーマセッションについて
  • カレンダー
  • 研究論文
  • ワケギ球根の植付けに対応した簡易移植機による作業性の改善 (川口岳芳・南田秀樹・川本靖信・佐藤彩佳・尾崎行生)
    要旨
    ワケギの球根の植付けは,一球ずつ中腰・手作業で行うため身体への負担が多大である.筆者らは,これまでワケギ球根の植付けが可能な簡易移植機とこれを利用した球根の植付方法を開発した.本報では開発した球根対応簡易移植機による植付時の作業時間,作業姿勢および自覚的運動強度に及ぼす影響を調査し,ワケギ球根の生育に及ぼす影響を明らかにすることで,作業性および栽培の面から実用性を評価した.OWAS法による作業評価において,手作業では “できるだけ早期に改善すべき姿勢(AC3)”が90%以上を占めたのに対し,本機を用いると“改善不要(AC1)”および“近いうちに改善すべき姿勢(AC2)”が90%以上を占め,作業姿勢の改善効果がみられた.修正Borg Scaleに基づく作業終了時の自覚的運動強度の主観評価は,手作業では腰が5.7~7.7,腿が3.3~8.8および膝が1.3~5.7であったのに対し,本機では腿が0.7,膝が0.3および脹脛が1.0となり大幅な軽労化効果が得られた.植付作業時間は大幅に短縮されたが,準備作業を含めた作業時間全体としては短縮効果が認められなかった.この対策として全体の59~83%を占める連結紙筒への球根の装填作業の効率化を図る必要があると考えられた.本機で植付けた球根の萌芽日,発根,栽培期間中および収穫時の生育は,慣行の手作業で植付けた球根と同等であった.
  • 研究報文
  • 大区画水稲乾田直播圃場における鎮圧作業による浸透抑制効果 (冠秀昭・大谷隆二・関矢博幸・中山壮一・齋藤秀文)
    要旨
    水田の減水深の制御が可能な乾田直播栽培技術の実用化を目指して,作土の土性がLiC(軽埴土)の3 ha規模の黒泥土水田においてプラウ耕鎮圧体系乾田直播の実証試験を行った.また減水深低減に必要な鎮圧強度を容易に判断するため,土壌硬度を指標とするための室内締固め実験を行った.その結果,土壌含水比が34%以上で土壌硬度が山中式土壌硬度計で20 mm程度まで鎮圧することにより,飽和透水係数が日減水深の目標値20 mmd-1に相当する2.3×10-5 cms-1まで低下することが明らかとなった.水田での鎮圧作業では圃場全面をケンブリッジローラにより4回鎮圧することよって,地表下5 cmの土壌硬度がおよそ20 mmに達し,飽和透水係数は2.3×10-5 cms-1に近い値となった.鎮圧を行った3 ha圃場および2 ha圃場の日減水深は12 mmd-1,10 mmd-1と日減水深の目標値以下となった.湛水期間中の暗渠内水位の調査から,鎮圧圃場の田面水位と暗渠内の水位は不連続であったが,無鎮圧圃場の田面水位と暗渠内水位はほぼ一致しており,田面と暗渠との間の水みちが連続していたことから,鎮圧圃場では地表下5 cm以下の鎮圧層で田面水位が維持されていることが確認された.以上のことから,乾田直播栽培において,土壌硬度を目安に行われた圃場面の鎮圧によって減水深が低減できることが明らかとなった.
    水稲のポット苗移植によるイネミズゾウムシの被害軽減効果 (本林隆・吉田稔・山口史哉・松川孝治)
    要旨
    ポット苗による水稲の移植栽培は,移植直後の生育停滞が少なく,茎数の確保が容易とされることから主に寒冷地で行われている.ポット苗のこのような特性は,生育初期の水稲の根を加害するイネミズゾウムシによる被害軽減に有効ではないかと考えた.そこで,圃場およびワグネルポットに移植したポット苗と慣行苗に対してイネミズゾウムシを一定個体数接種し,水稲の生育,収量,茎葉部乾物重,根部乾物重および出液量などを比較した.圃場で栽培した水稲では,イネミズゾウムシ接種によって生育初中期(移植後40~50日間)の茎数は非接種区に比べて低く推移した.非接種区に対する接種区の茎数の比率を比較すると,慣行苗区に比べてポット苗区の比率が高く推移した.また,ポット実験においても,イネミズゾウムシ接種により茎葉部乾物重,根部乾物重および出液量は低下したが,ポット苗区は慣行苗区に比べていずれの値も高い傾向がみられた.しかし,イネミズゾウムシ幼虫による直接的な加害がなくなる移植後50日以降の生育は年次によって異なっており,加害を受けた水稲の茎数が回復する場合は,生育初中期にみられたポット苗によるイネミズゾウムシの加害を軽減する効果は収量にまで反映されなかった.
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成27年度第2回常任幹事会議事録
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 農作業研究 第50巻 総目次
  • 編集後記

第50巻第3号(通巻第164号) 平成27年9月(オンライン版:平成28年3月)

  • 会告
    • 平成28年~30年度評議員選挙の開票について
    • 2015(平成27)年度日本農作業学会秋季大会(再掲)
  • カレンダー
  • 研究報文
  • 引張試験機によるミニトマトおよび中玉トマトにおけるへた離れ性および果柄の離脱性の評価 (樋口洋子・北條怜子・柘植一希・垣尾尚史・藤尾拓也・池浦博美・元木悟)
    要旨
    ミニおよび中玉トマトの房どり収穫は,収穫作業の省力化と収穫果実の高付加価値化が期待できるため,房どり収穫法の検討や房どり収穫向き品種の選定および育成に関わる研究が行われている.トマトの房どり収穫適性に関わる主要形質としては,果実のへた離れ性と果柄の離脱性が挙げられる.このうち,へた離れ性は,加工用トマトでは報告されているものの,生食用トマトでは報告例がない.また,果柄の離脱性は過去に測定されていない.そこで本研究では,生食用トマトのへた離れ性および果柄の離脱性の測定を行うため,市販の生食用トマト数品種を材料とし,新たに開発した治具および既存の冶具を使って,卓上引張試験機(EZ-SX,島津製作所)の利用の可能性を検討した.続いて,実際に栽培した収穫直後の生食トマト5品種を材料とし,へた離れ性および果柄の離脱性を測定し,へたおよび果柄の付着力の品種間差異と果実形質との関係性を検討した.その結果,へたおよび果柄の付着力,へた痕および果柄の直径や面積などに,品種間差異が認められた.そのため,卓上引張試験機と新たに開発した治具および既存の治具を用い,へた離れ性および果柄の離脱性の品種間差異が評価できると考えられ,それらを房どり収穫向き品種の選定または育成に利用できる可能性が示唆された.
    アスパラガス伏せ込み促成栽培における温床培地としてのおが屑利用の可能性 (地子立・午来博・園田高広・荒木肇)
    要旨
    アスパラガスの伏せ込み促成栽培における農作業の改善を目標に,温床での軽量培地としてのおが屑利用について検討した.温床への根株伏せ込み時におが屑のみを培地とした区では,土を培地として用いる慣行区より若茎収量が減少する傾向が認められた.一方,根株の地下茎の下におが屑,地下茎の上に土を用いた区では,慣行区と同程度の収量が得られ,栽培終了後の培地および根株の撤去時間も短縮された.したがって,おが屑を温床培地として利用する際は,おが屑単体ではなく,土と組み合わせて利用することで収量を低下させることなく,温床撤去時の省力化が図られると考えられた.
    • 農作業は鳥獣害対策の鍵 (竹内正彦)
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成27年度第1回常任幹事会議事録
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第50巻第2号(通巻第163号) 平成27年6月(オンライン版:平成28年1月)

  • 会告
    • 平成28年~30年度評議員選挙の投票について
    • 2015(平成27)年度日本農作業学会秋季大会
    • 日本農作業学会優秀地域貢献賞候補者の推薦依頼について(再掲)
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について(再掲)
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について(再掲)
  • カレンダー
  • 研究論文
  • ワケギ球根の植付けに対応した簡易移植機の開発と植付精度の評価 (川口岳芳・南田秀樹・川本靖信・佐藤彩佳・尾崎行生)
    要旨
    ワケギ球根の植付作業は,中腰・手作業でつらいことから省力・軽労化が求められている.そこで,長ネギなどで利用されている既存の苗の簡易移植機に新たな機構の装着や構造変更を加え小型・軽量化し,ワケギ球根の植付けに対応した以下の特徴を持つ簡易移植機を開発した.「苗台土寄せ板」と「植付部土寄せ板」を新たに装着することにより,土壌表面を均平化し,球根を一定の深さで植付けることができる.「苗ガイド板」の構造変更や機体上の段差の解消により,植付時の球根の転倒,ひっかかりおよび脱落を防止できる.「植付部」の狭小化と新たに装着した「補助溝切り器」により,溝底へ植付けることができる.開発機種の植付精度については,植付深さの変動が極めて小さく,植付時の機体への連結紙筒のひっかかりや転倒が皆無となり,本機の球根の植付けへの実用性が示された.
  • 資料
    • 施設圃場への省力的なエンバクわらの持ち込み方法 (神川諭)
  • 第49回講演会・講演要旨(平成26年3月)
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成26年度第4回常任幹事会議事録
    • 平成27年度総会議事録(第51回)
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第50巻第1号(通巻第162号) 平成27年3月(オンライン版:平成27年10月)

  • 会告
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会優秀地域貢献賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会創立50 周年記念 平成27年度関東支部会現地見学会の開催について(事前通知)
  • カレンダー
  • 研究報文
  • 米ぬか土壌表面処理後の機械除草が無除草剤栽培水稲の生育と収量に及ぼす影響 (中井譲・鳥塚智・河村政彦)
    要旨
    本研究では,2006年から2007年に米ぬか土壌表面処理後の機械除草が無除草剤栽培水稲の生育ならびに収量に与える影響を検討した.試験は,連作水田とダイズ作後の輪換水田において,米ぬか土壌表面処理の有無と機械除草の有無の組み合わせによる4処理区を設けて実施した.米ぬか土壌表面処理は,アゼナ類,コナギ,タマガヤツリおよびマツバイに極めて高い抑草効果が認められた.また,米ぬか土壌表面処理後に機械除草を実施すると,米ぬか土壌表面処理単独と比較して,さらに高い抑草効果が得られ,幼穂形成期の水稲窒素吸収量も増加した.その結果,単位面積当たりの穎花数とともに,精玄米重が増加することが明らかになった.ダイズ作後の輪換水田では,輪換2年目(2006年)は,精玄米重が連作水田と比較して増加したが,同3年目は,連作水田と変わらなかった.
    農業者アンケート調査結果に基づいた自脱コンバインの事故分析 (冨田宗樹・水上智道・塚本茂善)
    要旨
    自脱コンバイン(以下,コンバイン)事故の現状を明らかにし,効果的な対策を見出すため,農業者調査を基に事故の原因分析を行った.調査は,アンケート形式とし,全国の23道府県の902名の農業者から回答を得て,257件の事故事例を収集した.これらには,2件の死亡事故,134件の負傷事故が含まれ,242件において事故の形態を特定できた.これらを分析した結果,コンバインの事故は,重傷事故の割合から作用部における事故と転落・転倒事故に大別でき,概ね前者が全件数の2/3,後者が1/3を占めた.作用部の事故では,通院または入院を要した事故の割合が半数以上であり,今後,これらの事故を無くす対策が重要な課題と考えられた.作用部の事故の因子を分析したところ,その件数の2/3の事例で作業者の不注意な行動が一因と考えられた.一方,転落・転倒事故の件数の8割が負傷を伴わない事故であったが,収集された全ての死亡事故事例が転落・転倒事故であり,事故対策が必要と考えられた.また,トレーラまたはトラックによる輸送に関連する事故は自走移動およびほ場作業中より多かった.以上の結果から,コンバイン事故の軽減には,輸送時の転落防止対策および作用部への作業者の不注意な接近に対する安全確保手段の整備が必要であることが示唆された.
  • 日本農作業学会50周年企画-今後の日本農作業学会について-
      • 日本農作業学会のさらなる発展と責務について (瀧川具弘)
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成26年度第3回常任幹事会議事録
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第49巻 2014年(平成26年)発行

第49巻第4号(通巻第161号) 平成26年12月(オンライン版:平成27年6月)

  • 会告
    • 平成27年度春季大会(第50回講演会・第51回通常総会)開催について
    • 平成27年度春季大会におけるテーマセッションについて
    • 日本農作業学会の業務委託について
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  • 研究報文
  • 小明渠浅耕播種機における鎮圧播種効果 (佐々木豊・渡辺輝夫・中西幸峰・谷尾昌彦・建石邦夫・深見公一郎)
    要旨
    1)水稲乾田直播栽培の場合,出芽率はDS強鎮圧区が最も高くなるが,収量は全ての試験区で有意差を出現しなかった.コムギ栽培の場合,2008年から2010年の3年間の収量はDS弱鎮圧区がいずれの年度で最も高い.ダイズ栽培の場合,2009と2010年での出芽率と収量は,DS弱鎮圧区とDS強鎮圧区の比較で有意差を出現しなかった.
    2)水稲乾田直播,コムギ,ダイズの栽培において,深さ0∼5cm層の土壌体積含水率はいずれもDS強鎮圧区が最も高く,次いでDS弱鎮圧区,DS無鎮圧区の順番となり,播種層鎮圧の強さの順番と一致した.
    3)イネ,コムギ,ダイズの出芽率と土壌体積含水率の関係は,いずれの作物とも土壌体積含水率16%付近で出芽率を最も高くする予測となった.水稲乾田直播栽培において,DS強鎮圧は出芽率を高くする.コムギ栽培における播種層の土壌体積含水率は,14∼26%の範囲になるため,土壌体積含水率が16%よりも低ければ鎮圧を強くし,高ければ弱くする判断が必要となる.2010年と2011年での調査結果より,ダイズ栽培も,土壌水分に合わせて播種層の鎮圧の強弱判断をする必要がある.
    4)小明渠浅耕鎮圧播種の鎮圧は,深さ約6∼8cmまで土壌をち密にし,毛細管現象により土壌水分を高くすることが,土壌硬度の調査から明らかになった.播種層の鎮圧は実施してから約3ヶ月後まで土壌水分を高くする効果を保持する.
    携帯型NDVIセンサの特性と利用の検討 (佐々木大・村上則幸・林怜史)
    要旨
    携帯型NDVIセンサの特性を明らかにすることで,センサを用いた可変施肥や生育診断,品質予測などへの応用に向けた基礎的知見を得ることを目的とした.試験にはGreenSeeker Handheld Crop Sensor (GHCS)(株式会社ニコン·トリンブル)を用いた.牧草から得られたデータから,センサ値と植被率およびSPAD値の間には高い相関関係が認められ,センサ値から植被率とSPAD値を推定できると考えられた.植被率が98%以上と高い場合においては,センサ値はSPAD値に大きく寄与することが明らかとなった.コムギの場合,センサ値から植被率と茎数が推定できることが明らかとなった.ダイズにおけるセンサ値と植被率およびSPAD値との相関関係は,牧草より低くなった.本実験で取り扱ったダイズの多くが,植物体の上位で展開している葉の葉色が極めて薄く,葉に毛茸が多く,さらにデータ取得時に裏返った葉が存在しており,ダイズの葉の反射率が葉の状態によって異なったことが要因であると推察された.葉色の極端に薄い作物や品種,葉の毛茸が多い作物や葉の構造が特殊な作物に対して,GHCSを用いる場合についての留意点を今後検討する必要がある.
  • 特集:日本農作業学会創立50周年記念シンポジウム-農作業の過去と未来・光と影-
    • 資料
      • 日本社会の発展・変容と農業技術・農業経営 (生源寺眞一)
      • 稲作大規模経営の展開 (横田修一)
  • 日本農作業学会50周年企画-今後の日本農作業学会について-
      • 農的価値の研究 (荒木肇)
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成26年度第2回常任幹事会議事録
    • 賛助会員名簿
  • 農作業研究 第49巻 総目次
  • 編集後記

第49巻第3号(通巻第160号) 平成26年9月(オンライン版:平成27年3月)

  • 会告
    • 平成27年度春季大会(第50回講演会・第51回通常総会)開催について
    • 平成27年度春季大会におけるテーマセッションについて
    • 日本農作業学会優秀地域貢献賞規程
    • 日本農作業学会優秀地域貢献賞授賞細則
    • 平成26年度(第1回)優秀地域貢献賞候補者の選考結果について
    • 日本農作業学会創立50周年記念 声の募集
  • カレンダー
  • 研究報文
  • ハリエンジュ防風林に隣接する砂丘畑に発生したネギ葉鞘部湾曲症状の発生原因と対策技術 (佐藤一至・金田吉弘)
    要旨
    秋田県能代市河戸川地域のハリエンジュ(Robinia pseudoacacia)防風林に隣接する砂丘畑において,ネギ(Allium fistulosum)の葉鞘湾曲症状が問題になっている.そこで,ネギの湾曲症状とハリエンジュとの関係を解明し,その予防策を検討した.圃場試験の結果,ハリエンジュ林に近くなるにつれてネギの湾曲症状の発生率が高まる傾向にあり,特にハリエンジュ林から5 m以内に栽植された株は,湾曲症状の発生頻度が高く,かつ湾曲の程度も大きかった.そこで,ネギ湾曲症状の対策技術として,ハリエンジュ林を伐採した圃場で栽培したところ,ネギの湾曲株率は低減した.次に,ネギの湾曲症状に及ぼすハリエンジュからの落下部位の影響を明らかにするため,ネギを栽植したポットの上にハリエンジュから採取した花または葉を株元に敷きつめて栽培したところ,花を敷いた区においてのみ湾曲症状が発現することがわかった.このことから,ネギの地際部に花が直接触れないように被覆資材で覆ったところ,湾曲症状の発生頻度は低く,湾曲の程度も小さかった.以上のことから,ネギの湾曲症状への対策としては,ハリエンジュ林から5 m以上離れたところから栽培すること,または花の落下時期を回避するネギの作付け体系の確立が考えられた.
  • 資料
    • ノートパソコンを用いた農作業時間測定のためのプログラムの作成 (平泉光一)
  • 特集:農作業と野生動物の接点を求めて-平成26 年度春季大会見学会-
    • 資料
      • 平成26年度春季大会見学会の開催趣旨と実施概要 (庄司浩一)
      • 「コウノトリ育む農法」の取り組み (岡田弥一郎)
      • 篠山市今谷地区における集落ぐるみ鳥獣害対策の取り組み (山内一隆)
      • 住民による自発的な被害対策を支援する篠山市の取り組み (布施未恵子)
      • 農業の豊かな環境との調和を求めて (林久喜)
      • 「コウノトリ育む農法」を視察して (山口恭弘)
      • 篠山市今谷集落における鳥獣害対策を視察して (竹内正彦)
      • 日本農作業学会平成26年度春季大会現地見学会に参加して (實野雅太)
      • 日本農作業学会平成26年度春季大会現地見学会に参加して (砂川光)
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成26年度第1回常任幹事会議事録
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第49巻第2号(通巻第159号) 平成26年6月(オンライン版:平成26年12月)

  • 会告
    • 平成26年度秋季大会(創立50周年シンポジウム)開催について
    • 日本農作業学会優秀地域貢献賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
  • カレンダー
  • 研究論文
  • 湛水直播水田におけるエアーアシスト条播機の播種深増大技術の開発 (塚本隆行・吉永悟志・古畑昌巳・LOAN Nguyen Thi Thanh・帖佐直)
    要旨
    エアーアシスト条播機の播種深の制御を目的として播種精度の解析を行うとともに,複流式播種技術を開発し,その効果について定置条件での性能試験と圃場での栽培試験を行った. 1)吐出風速を増加させることで播種深を深くする手法を検討した結果,吐出風速の増加に対して種子の吐出速度と寒天ゲルへの埋没深の増加量は小さかったことから播種深の増大は困難であることが明らかになった. 2)送風機を増設し,副流の吐出空気で圃場表面に作溝し,主流の吐出空気で種子を播種する複流式エアーアシスト条播機を開発した. 3)土槽への作溝試験の結果,副流の吐出口から地表面までの距離が 20 mm 以下の条件で,地表面に作用する風速が 18 m/s 以上に達し,地表面に 7 mm の溝を生じさせた.播種深を深くすることが可能になる副流の条件を明らかにした. 4)複流式エアーアシスト条播機による ‘どんとこい’ の栽培試験の結果,慣行のエアーアシスト播種区に対して複流式の播種区では 3 mm 程度白化茎の長さが増加した.3回の圃場試験で得られた白化茎の長さから,目標の 5~10 mm の播種深が得られ,播種深度を深くすることで,表面に露出した種子の割合が大幅に減少した. 5)複流式エアーアシストで播種された稲の1ヶ月後の苗立ち率,草丈,地上部乾物重はエアーアシスト条播の条件と同程度得られた.最終的な乾物重および収量と精玄米千粒重についても同等となった.
    簡易移植機を利用したワケギ球根の植え付け方法の開発とその実用可能性 (川口岳芳・南田秀樹・川本靖信・佐藤彩佳)
    要旨
    広島県の特産野菜であるワケギ栽培において,球根の植付作業は,中腰,手作業での辛い作業であることから,軽労・省力・効率化が求められている.そこで,長ネギ用の簡易移植機を利用した新たな球根の植付方法を考案した.植付方法の作業工程は,水稲用育苗箱に展開した連結紙筒に球根を装填し,上から培地を充填する.次に,連結紙筒を浸漬し糊を溶解させ,簡易移植機に装着して引っ張る.植え付け前に連結紙筒へ装填が可能な球根割合は,収穫した球根の90%以上を占めたことから,連結紙筒が本植付方法に利用可能であることが示された.連結紙筒の糊を溶解させるための浸漬時間は,水温が 30°C では 22分,20°C では35分,10°C では 43分であった.本方法によるワケギの生育および収量は,慣行の手植えと同等であったことから,営利栽培への実用可能性が示された.しかし,簡易移植機の既存機種での球根の植え付けは,植え付け深さの不均一,植え付け時の球根の転倒および機体へのひっかかりが生じたことから,今後この問題を解決するために新たな機構の開発や改良を行い,球根の植え付けに対応した新機種を開発する必要性が示唆された.
    下水汚泥と稲わらの混合嫌気性消化によるバイオガス生産に向けた稲わら収集・運搬体系の検討 -新潟県長岡地域における事例- (渋川洋・井上明大・姫野修司・小松俊哉)
    要旨
    長岡浄化センターでの下水汚泥稲わら混合嫌気性消化によるバイオガス生産に必要な稲わらを,センター周辺水田から供給する収集・運搬体系を確立することを目的に,現地調査および現地試験を行った.その結果,稲わら収集可能な時期は9~10月で,収集可能回数は概ね6~8回であった.また,収穫後の降雨の影響により,稲わら収量は大きく異なった.収穫後に多量の降雨暴露を経た水田の稲わら収量は,水稲収穫直後の68%であった.これは主として,収穫後の降雨により一部の稲わらが地面と密着し,反転できなかったことによった.収集・運搬の最小単位は作業者3名で構成できた.収集日数2日間では,最大収集体系(梱包作業時間を最大にする体系)の収集量が最も多く,最小単位当たり 23~24 Mg/回(水分20%換算)であった.一方,収集日数3日間以上では,最少農機体系(最小単位の持つ農機各1台の体系)の稲わら収集量が最も多く,収集日数3日間で39.2 Mg/回,同 4日間で 58.8 Mg/回であった.これは,最少農機体系では集草,梱包作業と次の収集箇所の反転作業を同時に行えたことによった.収集日数2日間,収集回数7回(9月3回,10月4回)を仮定した場合,1916 Mg(水分20%換算)の稲わら収集・運搬に必要な延べ作業者数および延べ農機数は,最少農機体系では,42人,14~15台,最大収集体系では36人,レーキは24台,その他の農機は12~13台,反転2回体系では57人,19~20台と予測された.
  • 第49回講演会・講演要旨(平成26年5月)
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成25年度第4回常任幹事会議事録
    • 平成26年度第50回通常総会
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記
  • 日本農作業学会誌「農作業研究」への研究論文及び研究報文投稿時のチェックリスト
  • 日本農作業学会誌投稿規程
  • 執筆要領

第49巻第1号(通巻第158号) 平成26年3月(オンライン版:平成26年9月)

  • 会告
    • 平成26年度春季大会(第49回講演会・第50回通常総会)開催について
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
  • 研究論文
  • 黒ボク土壌におけるRothC改良モデルによる耕うん方法とカバークロップ利用体系別土壌炭素貯留量の予測-北関東でのオカボ作およびダイズ作での適用- (東達哉・小松崎将一・白戸康人・三浦重典)
    要旨
    カバークロップの利用と耕うん方法を組み合わせた農地管理が土壌の炭素貯留量に及ぼす影響について,RothC 改良モデルを適用して将来予測を行った.茨城大学附属 FS センター内の黒ボク土圃場にて,不耕起,プラウ耕,ロータリ耕の 3水準の耕うん方法とライムギ,ヘアリーベッチ,休閑のカバークロップ3水準を組み合わせて,2003年より2010年まで圃場試験を行った.各処理の土壌炭素含有率は毎年 2回計測し,実測データとした.RothC モデルは日本の黒ボク土用に改良されたものを利用した.まずモデルの予測値と実測値を比較した結果,ロータリ耕,不耕起ではモデルによる予測値と圃場試験の実測値が良く一致した.これに対してプラウ耕ではそれらより精度が低かった.30年後までの土壌の炭素貯留量の変化を RothC 改良モデルを用いて予測した結果,不耕起やロータリ耕にライムギを組み合わせた処理区では,土壌炭素がそれぞれ 11.1 および 8.8 MgC/ha 増加する予測が得られた.
  • 研究報文
  • キウイフルーツにおける果実成熟と果実品質に及ぼすホルクロルフェニュロン処理の影響とその品種間差異 (村上覚)
    要旨
    キウイフルーツの CPPU 処理について,倍数性や収穫時期の異なるA. chinensisで6品種,A. deliciosa で5品種を対象とし,その効果の違いについて検証した.収穫期の前進効果が期待できたのは,A. chinensis の ‘レインボーレッド’ および ‘小林 39号’ の 2品種で,他の品種では効果は期待できなかった.果実肥大に関しては,5 ppm 処理で全ての品種で効果がみられた.果皮色の変化,果実の扁平化,縦筋の発生,果頂部の異状肥大,凹凸果の発生,落果については品種による差がみられた.本研究の結果から,二倍体と四倍体中心の A. chinensis と六倍体中心の A. deliciosa の間で,処理効果の傾向は判然としなかったものの,品種間による差は明らかであった.このため,キウイフルーツにおける CPPU 処理においては,品種により適用条件について詳細に検討する必要があると考えられた.
    短節間カボチャ‘TC2A’の水田転換畑での栽培における窒素施肥量及び施肥回数の検討 (杉戸智子・辻博之・村上則幸・杉山慶太・嘉見大助・建部雅子・信濃卓郎)
    要旨
    短節間カボチャ ‘TC2A’ の栽培における窒素施肥量と施肥回数(1回の全量基肥もしくは基肥と雄花開花前の2回に分けての分施)について,北海道の水田転換畑での栽培を対象に生育,果実収量および品質の面から解析した.牛ふん麦わら堆肥 1 t/10a を施用した淡色黒ボク土の転換初年度の畑での栽培において,窒素施肥量が 8 kg/10a までは窒素施肥量が多くなるほど果実収量が高くなり,果実乾物率やデンプン含量が高くなることにより果実品質が向上する傾向を示した.窒素施肥量を 12 kg/10a としても果実収量や品質の向上は認められなかった.また,窒素施肥量が 8 kg/ 10a であっても,基肥 4 kg/10a と追肥 4 kg/10a の 2回に分施することで,基肥のみで施肥した場合と比較して,収穫時の茎葉の生体重が増加し,日焼け・腐敗果率が有意に低くなった.以上より,北海道の転換初年目の水田転換畑において,牛ふん堆肥 1 t/10a を施用した淡色黒ボク土での短節間カボチャ ‘TC2A’ 栽培では,窒素 8 kg/10a を上記のように分施することが適していると判断した.
    有機質肥料と床土原土との混和時期が水稲苗の生育に及ぼす影響 (朝妻英治・高橋行継・平井英明)
    要旨
    水稲有機栽培において,健全な有機中苗生産技術の確立に資することを目的として,プール育苗方法,中苗育成における魚分,菜種油粕の床土原土との混和時期が水稲苗におよぼす影響について検討した.魚粉と菜種油粕をそれぞれ窒素成分 1:1 で配合したもの(箱当たり窒素成分量 2g)と森林下の表層土(山土)を 4週間前,2週間前,1週間前,播種当日に混和した培土を使用し育苗した4試験区で実施した.各試験区について苗生育および窒素含量を調査した.設定した全ての培土で育成した苗に生育障害は認められなかったが,一方で播種4週間前に混和した培土を使用するとマット全体に生育むらが広く発生した.
    バイオエタノール粗原料としての稲わらの長期圃場乾燥時における反転処理省略の効果 (関根基・小川幸春・松岡延浩)
    要旨
    稲わらをバイオエタノール粗原料として利活用する際の処理コスト削減を目的に,刈り取り後の長期間圃場乾燥および乾燥中の反転処理省略効果を千葉県柏市に設置したサイトでの実規模試験によって検討した.本試験の事例では,刈り取り後20日目に反転処理した稲わらは,反転処理しなかった稲わらに比べて刈り取り後50日目までの間に最大10%程度の水分差が確認された.しかし51日目以降は反転処理の有無に係わらずほぼ同じ水分を示し,反転処理を省略しても好天が続けば乾燥は進むことが確認された.一方,圃場乾燥中の稲わらの成分組成に統計的に有意となる大きな変化は確認されなかった.本試験では,圃場収集の全作業時間に占める稲わらの反転処理作業時間の割合は12~27%であった.また反転処理を省略した場合,収量の増加に伴って作業時間は増加するものの収集コストは減少することが確認された.以上の結果,関東圏のように冬季に晴天が続く地域では,刈り取り後の圃場乾燥における反転処理省略によって処理コストの削減が可能になることが示された.
    • 農作業学会 北陸支部談話会の記録 (小松﨑将一)
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成25年度第3回常任幹事会議事録
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 日本農作業学会誌「農作業研究」への研究論文及び研究報文投稿時のチェックリスト
  • 日本農作業学会誌投稿規程
  • 執筆要領
  • 編集後記

第48巻 2013年(平成25年)発行

第48巻第4号(通巻第157号) 平成25年12月(オンライン版:平成26年6月)

  • 会告
    • 平成26年度春季大会(第49回講演会・第50回通常総会)開催について
    • 平成26年度春季大会におけるテーマセッションについて
  • 研究論文
  • 水路における忌避材によるスクミリンゴガイの産卵抑制 (田坂幸平・和田節・遊佐陽一・吉田和弘・安東敏弘・土屋史紀・深見公一郎・佐々木豊)
    摘要
    開発したスクミリンゴガイ用忌避材の産卵抑制効果と,産卵抑制による水路内の貝密度低減効果の検証を行うため,佐賀県上峰町の水路で実証試験を行った.忌避材の産卵抑制効果は極めて高く,塗布面では 3年間効果が持続した.しかし,水路の水位の変動に対応した産卵抑制を行うためには,忌避材を水面の直上に帯状に塗布するのではなく,壁面に幅広く面状に塗布する必要があった.また,数十 m 規模の忌避材塗布では産卵抑制による貝密度の変化を確認することはできなかった.忌避材の貝密度低減効果を検証するためには,貝の移動の範囲を考慮した数 km 規模の実証試験が必要であると考えられた.
    コマツナの収穫・結束作業を例とした農作業における唾液中生化学物質を用いた精神的負荷評価 (小泉明嗣・深山陽子)
    摘要
    農作業における精神的負荷評価指標として,精神的負荷により変動が生じる唾液中生化学物質が利用可能か検討した.対象とする農作業はコマツナ収穫・結束作業とした.120分間の作業中に唾液を採取し,唾液中生化学物質としてα-アミラーゼ,DHEA, コルチゾールおよび SIgA を定量分析した.作業に伴い生じる変動を解析したところ,α-アミラーゼ活性が作業に伴って有意に増加し,農作業の精神的負荷評価において有効な指標になる可能性が示唆された.
    ベルト式繰出し機構を用いた二段ベルト精密播種磯の開発 (松尾健太郎・屋代幹雄)
    摘要
    間引き作業の簡略化を目的に,正確な播種間隔で播種することができる二段ベルト精密播種機を開発した.開発機の特徴は,重なった2本のベルトが同期して動き,上ベルトの小さな穴で種子を1つずつ取出し,上下のベルトが接している間に下ベルトの大きな穴に種子を渡し,低い位置で種子を放出することである.これにより種子の落下位置が安定し落下距離が短くなる.定置試験においてコート種子のニンジンの播種では,作業速度 0.56 m/s でも播種間隔の四分位範囲は 8.4 mm と対照の播種機(真空播種機とベルトアップダウン式播種機)の2分の1以下であり,最大頻度割合(播種間隔の誤差の許容範囲を 20 mm として,この範囲でもっとも度数が高くなる時の割合)は94%,欠粒率および2粒播き率も0%と,正確な播種が可能であった.また,形が不均一な裸種子のホウレンソウやダイコンの播種では,欠粒率が真空播種機よりも同等かやや高くなった.しかし,作業速度 0.56 m/s でも四分位範囲は 8.6 mm・12.6 mm, 最大頻度割合は87%・76%と,真空播種機の 29.4 mm・22.1 mm および 40%・50%よりも正確な間隔で播種が可能であった.また,圃場試験の二段ベルト精密播種機の四分位範囲および最大頻度割合は,定置試験の場合よりも低下したが,対照の播種機よりも播種精度は高かった.
  • 研究報文
  • カナカブの焼畑栽培における省力作業技術 (片平光彦・伊藤晶)
    摘要
    秋田県由利本荘地域の在来作物であるカナカブは,主に焼畑で栽培されており,生産量を増加するため作業の省力軽労化が望まれている.本報では,粗耕起に歩行管理機を用いた新作業技術を提案し,その効果を生産現地で実証した.試験ほ場は,標高差が 10 m, 平均斜度が 14.0° であった.作業能率は,鍬を用いた慣行区が47 h/10a, 歩行管理機を用いた機械化区が 6 h/10a となり,省力化率が87%であった.生育と収量は,機械化区が慣行区と比較して発芽本数は 36本/m2 増加したが,栽植密度の増加から一本当たりの根重が低下して収量が28%,可販化率が37%減少した.使用した歩行管理機の作業特性は,走行部がクローラ式の管理機2とホイール式の管理機1と比較し,管理機 2が車輪の接地面長さが長く重量転移が少ないため,重心が安定して 30° 以内までの傾斜地で作業可能であることが示唆された.労働負担は,機械化区の作業負担度が慣行区から 92%削減され,平地での作業以上に労働負担の軽減効果が大きかった.作業姿勢は機械化区で改善が不要とされる AC1 が 100%の発生率となり,慣行区で改善が必要と判定された作業姿勢が全て解消された.実証した新作業技術について生産者は,平地での歩行管理機と同様に使用可能で作業が楽になると評価したが,作業の安全性を考慮して新作業技術と慣行作業技術を併用した作業法の提案が必要である.
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成25年度第2回常任幹事会議事録
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 農作業研究 第48巻 総目次
  • 編集後記

第48巻第3号(通巻第156号) 平成25年9月(オンライン版:平成26年3月)

  • 会告
    • 平成25年度 秋季大会の開催について
  • 研究論文
  • サツマイモ直播栽培用の種イモ切断装置および電動植付け機の開発 (上加裕子・山下淳・佐藤員暢)
    摘要
    農業機械のクリーンエネルギー化対策として,本研究は,バイオエタノール原料であるサツマイモの直播栽培の作業工程における省力,省エネ化を目指し,種イモ切断装置および電動播種機を開発し,その効果について検証した.
     種イモ切断装置の仕様決定に際しては,装置のコンパクト化,作業の能率化を考慮して,切断角は 9° 程度,切断速度は 0.3~0.5 m/s が適当と考えられた.本切断装置を用いて,1 本のイモから 8 個の種イモを作製する時間は,約 50 秒であった.
     1.5 kW モータを搭載した電動播種機を試作した.その結果,改造前のガソリンエンジン式より大幅なエネルギー消費量の削減が確認できた.電動播種機の播種機構作動に必要な電力は,走行に必要な電力の約 20%であり,多くの電力が走行用に使われることから,走行抵抗を低減すれば,更なる省エネ化が期待できると考えられる.
     また,一回の満充電あたりの連続作業時間は 3.7時間/1300 m2 となり,10 アール当たりの作業時間に換算すると 2.76 時間となった.バッテリが劣化して容量が 80%になったと仮定しても 2.96時間,作業面積にして 1000 m2 の連続作業が可能であり,改造前のエンジン式の連続作業時間と比較すると 10 分の 1 程度であるものの,作業能率は遜色なく,実用化の可能性があることが確認できた.
    部分浅耕播種法がコムギの品質、収量および播種の省力化に及ぼす影響 (川村富輝・中野恵子・光岡宗司・井上英二・岡安崇史)
    摘要
    部分浅耕播種が水田転換畑におけるコムギ作の生育・収量・品質に及ぼす影響および播種作業にかかる作業時間および燃料消費量について,慣行と比較検討を行った.得られた知見は以下のとおりである.
    1) 部分浅耕播種したコムギは,慣行に比べて,出穂期に差は無かったが,成熟期は0~3日遅かった.稈長は同程度,穂長は長く,穂数は多い傾向にあった.収量は同程度~多く,千粒重に差は見られなかった.タンパク質含有率は高い傾向にあり,容積重は同程度∼やや重かった.
    2) 部分浅耕播種によるコムギの収量・タンパク質含有率向上効果は,湿害傾向の圃場で大きく,湿害の発生していない圃場では小さい傾向にあった.部分浅耕播種の作土内土壌構造は,耕起部分では速やかに過剰水が排出される一方,作土内に排水用の間隙を多くもたない土壌構造が維持された.これがコムギの生育に有利に働いた可能性がある.
    3) 部分浅耕播種は,播種作業にかかる作業時間と燃料消費量が,慣行に対してそれぞれ約 45%と 22~25%と大幅に削減できた.この要因は,部分浅耕播種が荒起しを省略できること,部分浅耕ロータリは耕起する土壌の断面積が小さく,ロータリ負荷が小さいためと考えられる.
  • 研究報文
  • 農作業安全に関するe-ラーニングシステムの開発と学習者の知識レベルの推定 (積栄・岡田俊輔・志藤博克・菊池豊・中野丹・米川智司)
    摘要
    農業機械の安全使用について,ICT を利用した効果的な学習手段を提供する eラーニングシステムの開発を行った.幅広い学習者が利用でき,動画等で効果的に理解が深められること,学習者の知識レベルが把握できること等を目的とし,ユーザ登録や LMS を使わず,幅広い仕様のPCで,簡易な利用・操作が可能なシステムを構築することとした.これらを踏まえ,事故の多い4機種7項目で構成されるシステムを試作した.各学習項目では,設問や動画等を配置して効果的に学習できるシナリオを作成し,学習者の知識レベルはシステムにおける各ファイルのページビュー数から確認可能とした.本システムを公開し,利用状況から学習者の農作業安全に関する知識レベルの傾向を分析した結果,乗用トラクタと自脱コンバインでは,機体安定性関連の設問で不正解が多かった一方,乗用トラクタのROPS関連では不正解が少なかった.歩行用トラクタでは,他機種と比較した事故数の多さや後進時の挟まれ事故防止に関する設問で,刈払機では,最も多い事故の形態及びキックバックの原因に関する設問で,不正解が多い傾向が見られた.これらは,別に行った農業者へのアンケートにおける危険を感じる作業についての回答結果や実際の事故発生傾向と一致しており,今後の安全教育では,機種により,機体安定性や操作上の注意点,どのような事故が多発しているかといった点について一層の周知が必要と考えられた.
  • 本会記事
    • 日本農作業学会平成25年度第1回常任幹事会議事録
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第48巻第2号(通巻第155号) 平成25年6月(オンライン版:平成25年12月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 平成25~27年度の事務局・会計・編集事務局・学術賞選考委員会の所在について
    • 平成25年度 秋季大会の開催について
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
  • カレンダー
  • 研究論文
  • 転換畑における部分浅耕播種法がダイズの生育・収量に及ぼす影響 (川村富輝・小田原孝治・光岡宗司・井上英二・岡安崇史)
    摘要
    ロータリハローの播種条部分に培土用カルチ爪を装着した改造ロータリによる部分浅耕播種法のダイズ栽培における特長を播種比較試験と現地試験により検討した.部分浅耕播種法は,多湿土壌条件下でも播種作業が可能で,播種後が多雨・少雨どちらでも苗立ちが安定した.部分浅耕播種したダイズは,慣行に比べて,主茎長が長く,最下着莢高が高く,多収となった.
    コナギとイヌホタルイの多発圃場における機械除草法の改良-株際機械除草法の開発- (中井譲・鳥塚智)
    摘要
    米ぬか土壌表面処理単独による水田雑草の抑草技術は,コナギとイヌホタルイに対する抑草効果が低い.これに対応するため,米ぬか土壌表面処理後に,歩行型水田用中耕除草機のロータの配列変更による株際機械除草技術を検討した.
    米ぬか土壌表面処理後にコナギとイヌホタルイの残草が多発した圃場では,歩行型水田用中耕除草機で株際機械除草 2 回を実施することにより,条間のコナギとイヌホタルイのみならず,株際のイヌホタルイにも除草効果が認められた.また,米ぬか土壌表面処理と株際機械除草2 回を組み合わせた複合除草技術は,米ぬか土壌表面処理単独と比較して,雑草害による水稲収量の減少を軽減することができた.
    根深ネギ‘湘南一本‘を用いた短葉鞘化ネギ栽培体系 (小泉明嗣・深山陽子)
    摘要
    高付加価値な良食味根深ネギ品種‘湘南一本’を用いた省力的な根深ネギ生産を目指し,短葉鞘化ネギ栽培体系の開発に取り組み,作業時間,栽培期間および収量を検討した.その結果,定植から収穫調製作業までの総作業時間は 126.9人・h/10a であり,慣行栽培体系から 53%短縮された.また,2月24日から 5月23日にかけて 1ヶ月おきに播種を行ったところ,播種から収穫までの栽培期間は,4ヶ月半から 5ヶ月半であり,7月上旬以降連続して収穫可能だった.収量は,いずれの播種時期も約 3000 kg/10a だった.このことから,根深ネギ‘湘南一本’による短葉鞘化ネギ栽培体系は,省力的な根深ネギ生産に有効な方法だと考えられた.
  • 第48回講演会・講演要旨(平成25年3月)
  • 本会記事Ⅱ
    • 会務報告
    • 日本農作業学会平成24年度第4回常任幹事会議事要旨
    • 平成25年度評議員会記録
    • 平成25年度通常総会記録
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第48巻第1号(通巻第154号) 平成25年3月(オンライン版:平成25年9月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
    • 平成25年度 秋季大会の開催について
    • 第29回日本農業工学会シンポジウム 次世代へつなぐ生物生産-国際競争下での新たな農作業システムの展開-
    • 編集委員会の新体制および投稿規程、執筆要領、チェックシートの改定について
  • カレンダー
  • 研究論文
  • ベルト式繰出し機構の播種精度を低下させる要因の解析 (松尾健太郎・屋代幹雄)
    摘要
    傾斜ベルト式播種機において種子が放出されて地表面に着地する直前までの過程で播種間隔に影響を与える要因を高速度カメラを用いて明らかにした.
    1)落下開始直後の播種間隔のSDはホウレンソウで15∼20 mm, ダイコンで18∼20 mmと大きく,ニンジンでは10∼11 mmと小さかった.
    2)ホウレンソウとダイコンのような形が不均一な種子では,リンクベルトの種子穴に入った状態が一定ではないために,放出位置が大きく変動した.
    3)リンクベルトからの放出位置が0 mm以上で放出された場合は落下角度の変動が大きくなった.
    4)種子誘導管に衝突した場合,管壁角度が大きいほど,落下角度とその変動が大きくなった.
    5)ホウレンソウとダイコンでは約80%の種子が種子誘導管に衝突し,落下時間の変動が大きくなった.
    6)ホウレンソウとダイコンでは種子誘導管がある場合をない場合と比較して通過位置のずれのSDは約0.4倍になり,播種間隔のSDは約2.5倍になった.
    7)リンクベルトの移動方向が播種機の進行方向と逆方向の場合は播種精度が低下する.
    8)ホウレンソウとダイコンでは種子誘導管がなく落下距離が長い場合,放出位置が広範囲で落下角度も大きいことから,溝切部などに衝突する可能性が増加する.
  • 研究報文
  • ハウス内の土壌特性とトマト収量に及ぼす不耕起とヘアリーベッチマルチの影響【英文】 (荒木肇・藤井崇)
    摘要
    新潟大学農学部村松ステーション(黒ボク土)で,プラスチックハウスでの土壌特性の変化とトマト収量に及ぼす不耕起とヘアリーベッチ(以下HV)マルチの影響を調査した.1998年10月5日にHVを5 kg/10aの密度で播種し,1999年4月にHV生育場所にハウスを設置し,5月13日に刈り倒して残渣マルチとした.ハウス内の 4 試験区に,台木‘影武者’に接ぎ木した‘桃太郎T93’を5月14日に定植し,9月30日まで栽培した.試験区は①耕起,②不耕起,③耕起後にHV を敷く(耕起-HV),および④不耕起にHV を敷く(不耕起-HV)の4種とした.プラスチックハウスへの不耕起とHV の導入について,土壌環境からみると,不耕起では高い土壌硬度を示すが,不耕起-HV では土壌硬度を低下させ,土壌3相の構成比率の変化を緩和することが明らかになった.トマト収量は耕起-HV で最大となり,ついで耕起と不耕起-HVで,不耕起では減少した.HV マルチはトマト生育初期にトマト植物体中の硝酸含有量を高め,それが生育促進と収量増加に結びつくと考えられた.
    農業機械における操作装置の実態と高齢者及び女性への適応性 (冨田宗・皆川啓子・土師健・杉浦泰郎・塚本茂善・川瀬芳順)
    摘要
    農業従事者に占める高齢・女性の割合は増加しており,農業機械の安全鑑定基準の見直しが必要になっている.そこで,その際に用いる農業者に関する基礎資料を得るための研究を実施した.その方法として,市販機の安全装備と関連する農業者の身体機能の実態をそれぞれ調査し,対比させることによって改善点を明らかにした.対象とする安全装備は,最下段ステップ及び手すりの高さ,座席調整範囲並びにブレーキペダル操作力とした.市販機の調査は,乗用型トラクタ,自脱型コンバイン,田植機及びスピードスプレーヤの安全鑑定適合機計83型式を供試して行った.また,農業者の調査は,女性54名,65歳以上男性48名を含む全国14県の農業者延べ179名を被験者として行った.その結果,供試機の96%において最下段ステップの高さは女性の足上げ高さの第3四分位数を超えており,手すりの高さはトラクタ3型式で女性の握り高さの第3四分位数を超えていた.座席調整範囲は,身長150 cmの農業者がブレーキ操作を容易に行う上では,コンバイン以外では前後方向に,コンバインでは上下方向に不足していた.女性の踏力の中央値は基準値の約半分であり,供試機のうち87%でブレーキ操作力はこれを下回っていた.従って,これらに関する基準の見直しまたは新設が必要と判断できたが,その実現にあたっては作業性及び改善または改良のためのコストを検討する必要があった.
  • 平成24年度 日本農作業学会秋季大会報告
    • 平成24年度秋季大会に参加して (實野雅太)
    • 平成24年度秋季大会に参加して (行本航)
  • 本会記事Ⅱ
    • 日本農作業学会平成24年度第3回常任幹事会議事要旨
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 第49回通常総会・第48回講演会プログラム
  • 編集後記

第47巻 2012年(平成24年)発行

第47巻第4号(通巻第153号) 平成24年12月(オンライン版:平成25年6月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 平成25年度 春季大会の開催について
  • カレンダー
  • 研究論文
  • 北海道の春コムギ-カバークロップ輪作体系におけるバイオマス生産と窒素吸収 (平田聡之・永山毅・荒木肇)
    摘要
    コムギ栽培では,古くから地力維持を目的としたカバークロップの利用が進められてきた.本研究では,冷涼積雪地帯である北海道におけるヘアリーベッチ,野生エンバク,ヘアリーベッチと野生エンバクの混播および休閑を導入した 4種の 1年輪作体系において春コムギのバイオマス生産と窒素吸収量を調査した.以下に結果の概要を示す. 1)カバークロップを栽培した区では,コムギの収量が増加したが,カバークロップ種間で有意な差異が認められなかった. 2)2008年と2009年のコムギ収量を比較したところ,カバークロップを栽培していない区では 55.4%に低下したが,カバークロップを導入した区では 36.7%以下の減少率に留まった.このことから,カバークロップによりコムギ収量の安定性が増加すると考えられた. 3)推定窒素源、カバークロップ種および耕起法を説明変数とした重回帰分析の結果から,コムギの窒素吸収量は,野生エンバクによる負の効果が認められた.このことから,マメ科カバークロップであるヘアリーベッチの有効性が示された. 4)カバークロップを栽培した区では,コムギ収量に春耕による効果が認められなかった.このことは,カバークロップ栽培を取り入れた春コムギの不耕起播種の有効性が高いことを示している.
  • 研究報文
  • キウイフルーツ‘レインボーレッド’(Actinidia chinensis)におけるホルクロルフェニュロン液剤処理による収穫期前進の可能性 (村上覚)
    摘要
    果実の大玉化と販売期間の拡大が課題であるキウイフルーツ‘レインボーレッド’で CPPU処理の影響を検討した.その結果,満開後30日以内に2.0∼4.0 ppm以上の浸漬処理により,収穫時の糖度および果肉の赤みは向上し,硬度とクエン酸含量は低下した.一方,果実肥大については,その効果は不安定であった.熟期の促進は明らかであったことから,収穫期が前進できる可能性が確認され,無処理と組み合わせれば,販売期間の拡大と収穫作業の分散の可能性が期待できた.しかしながら,8月下旬以降から落果が助長され,果皮は濃緑になり,果頂部が肥大することで商品性が低下する傾向を示したことから,今後はその影響を小さくすることと収穫期の前進程度を明らかにすることが課題である.
    • 「野外科学」の方法で農作業研究を活性化しよう (塩谷哲夫)
  • 書評
  • 本会記事Ⅱ
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第47巻第3号(通巻第152号) 平成24年9月(オンライン版:平成25年3月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 平成24年度 秋季大会の開催について
    • 平成25年度 春季大会の開催について
  • カレンダー
  • 研究論文
  • 小麦の節間伸長開始期の指標としての偽茎長【英文】 (谷尾昌彦・渡辺輝夫・深見公一郎・佐々木豊・建石邦夫)
    摘要
    日本温暖地における小麦の節間伸長開始期の指標を開発するため,小麦品種「農林 61号」を用いて,主茎について頂端発育ステージ,茎長および偽茎長(地面から最上位展開葉の葉節までの長さ)の関係を解析した.頂端の発育の経時推移は年次と播種日によって異なり,特に播種日による変動が大きかった.しかし,茎の伸長と頂端の発育との間には同調的関係が認められ,節間伸長開始は小花分化期に起こった.また,偽茎長と頂端発育ステージとの間には高い相関が認められ,小花分化期の偽茎長は 5.6 cm であった.これらの密接な関係の結果,節間伸長開始期は偽茎長が約 5 cm のときであった.したがって,日本温暖地の小麦栽培において,偽茎長は節間伸長開始期の指標として有用であると考えられた.
  • 研究報文
  • トマト心止まり品種‘盛岡7号’の高設栽培への適応性 (深山陽子・佐藤達雄)
    摘要
    施設イチゴ養液栽培の休耕期間である夏期の高設ベンチの補完的な利用法を開発するため,心止まり性トマト品種‘盛岡7号’の適応性を評価した.その結果,5月末に定植を行った場合,8月下旬までに約6 t/10aの収量が得られた.本品種は強い矮性形質を有しており,整枝,誘引は不要であり,収穫回数も週1回であった.その結果,作業時間は短く,作業時間あたりの可販果収量も養液栽培・抑制,半促成作型‘ハウス桃太郎’より顕著に少なくなると考えられた.
     また,培養液濃度は,生育・収量からみて定植から収穫初期までは山崎処方1単位(EC約1.2 dS/m),それ以降は2単位(同2.4)で管理するのがよいと考えられた.
    • 課題を“もう一歩掘り下げること”とは (塩谷哲夫)
  • 本会記事Ⅱ
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第47巻第2号(通巻第151号) 平成24年6月(オンライン版:平成25年1月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
    • 平成24年度 秋季大会の開催について
    • 平成25年~27年度評議員選挙の投票について
  • カレンダー
  • 研究論文
  • 夏作カバークロップの生育と多変量解析による特性分類の検討 (小松崎将一・菅沼香澄・荒木 肇)
    摘要
    本研究は,9種類のカバークロップの生育,有機物供給量及び,養分吸収量,有機栽培との適応性を明らかにすることで多変量解析によるカバークロップの総合評価を行った.得られた結果は以下のとおりである.
    1)カバークロップの乾物重をみると,6月ではエンバク,シロガラシの生育量が大きく,エンバクが 7.5t/ha, シロガラシが 8.5t/ha の乾物重を示し,その他のカバークロップと比べて有意差がみられた.また,7月以降ではソルガムの乾物重が著しく増加し,8月には,31.0t/ha の乾物収量を得た.
    2)カバークロップの吸収養分特性をみると,多くのカバークロップで有機物生産量が増加するにしたがって養分吸収量も増加することが認められた.
    3)カバークロップ後作のブッロコリの地上部収量をみるとクロタラリアで 33t/ha の最も高い値を得たのに対し,ワイルドフラワーの混播ではクロタラリアの 6分の 1の収量にとどまった.
    4)カバークロップのもつ特性について,多変量解析のうちの主成分分析とクラスター分析を適用し客観的な評価を行った結果,カバークロップの特性は生育時期によって大きく異なり,バイオマス増加に伴う養分吸収とカバークロップの CN 比の変化によって主成分分析の結果は変化し,農業者がカバークロップを導入する際の最適な作物の選択と栽培期間の決定するための基礎的なデータとなることが示唆された.
    圃場調査における小型空撮気球の有用性-水田転換コムギ圃場での事例- (村上敏文・森 正彦・小柳敦史・菱沼英昌)
    摘要
    近年のデジタルカメラの軽量化により,小型気球による空撮が可能になってきた.しかし,わが国では研究例が少なく,コムギ畑で問題となっている生育不良を調査した例もほとんど見あたらない.そこで,大規模農業法人の水田転換コムギ畑の調査に空撮を導入し,画像解析の方法を検討して,空撮が圃場調査やデータ解析に有用かどうかを検証した.空撮画像は,小型のヘリウムガス気球(全長 1.8 m, 体積0.64 m3)にコンパクトデジタルカメラを吊り下げて撮影した.地上調査では土壌の体積含水率,葉色,草丈,子実収量等を測定した.画像処理では,一般の画像ソフトを用い,地形の歪み補正,植被率の計算,湿った土壌の分布の把握を行った.高度約 180 mからの俯瞰画像は,広域のコムギ圃場の生育比較を可能にしたので,地上調査を行う圃場を効率的に選定できた.高度 117 mからの真下方向の画像は,地上調査での調査位置の選定や全体見通しの把握を容易にした.また,植被率による圃場の区分けを可能にし,生育不良の要因解析を容易にした.生育不良は,土壌水分が高く,土壌が硬く,相対標高が低い条件で引き起こされた.また,空撮画像の土壌の色の濃さから排水対策の効果を判定することができた.以上より,簡易空撮気球は,圃場調査やデータ解析の精度を高める有用なツールであることが示された.
  • 第47回講演会・講演要旨(平成24年3月)
  • 一般公開シンポジウムの記録
    • 「放射能汚染と農作業」 (田島 淳)
    • 春季大会に出席して…想う (塩谷哲夫)
  • 本会記事Ⅱ
    • 会務報告
    • 日本農作業学会平成23年度第4回常任幹事会議事要旨
    • 平成24年度評議員会記録
    • 平成24年度通常総会記録
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 編集後記

第47巻第1号(通巻第150号) 平成24年3月(オンライン版:平成24年9月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 農作業研究特集原稿の募集について
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
    • 平成24年度秋季大会の開催について
    • 平成24年度日本農作業学会功績賞候補者の選考結果について
  • カレンダー
  • 研究報文
  • 有色サツマイモの乾燥技術の開発 (深澤秀夫・藥師堂謙一・細川 寿・渡辺輝夫・中司 敬)
    摘要
    近年,サツマイモの生産量は漸減傾向にあるが,焼酎用,加工食品用への用途拡大が進められている.そのなかで,高アントシアニン品種“アヤムラサキ”が育成され,食品素材としての活用が期待されている.従来,有色サツマイモを一次食品素材とする場合,蒸煮工程を経る αデンプンの状態で流通していたが,生いもから直接,細切・乾燥することで βデンプンのままで,かつ有用色素を保持させる乾燥方法を開発した. 
    1)細切したアヤムラサキ塊根の加熱通風乾燥では,恒率乾燥期間があり,乾燥後の成分品質を考慮すると短時間で乾燥できる送風量は 0 .015 m3/s・kg(水)が適した. 
    2)アントシアニン含有率は,送風量の大きい 0.015 m3/s・kg(水)で高く,送風温度 50~80℃の範囲では乾燥後の歩留まり率は 75~87%であった.定常送風温度としては,60℃でアントシアニン含有率が高かった. 
    3)アントシアニンを保持しつつ,デンプンを糊化させない品温を保つため,材料の品温上昇が緩慢な乾燥初期において,送風温度 80℃から開始し,短時間で品温を上げ 55℃で終了する降温操作が有効な一方法であった. 
    4)回転通気式乾燥機での降温操作の有効性が得られたので,それをもとに農産物加工施設における乾燥処理工程を提案した.
    農用車両走行による諫早湾干拓土壌の構造と力学特性の変化 (宮嵜朋浩・岡安崇史・杉本知史・井上英二)
    摘要
    農用車両の走行に伴う諫早湾干拓土壌の踏圧現象を明らかにするために,トラクタを用いた圃場走行試験を行い,走行前後のかさ密度ならびに三相分布を比較することで,走行荷重が土壌構造の変化に及ぼす影響について検討した.さらに,土質試験により干拓土壌の力学特性を調べた.得られた知見は,以下の通りである.
     1)走行に伴う土壌の圧縮は表面付近で顕著に発生し,その主な要因は気相率の減少によるものである.
     2)土壌内の水は,踏圧直後には排水されず,時間の経過とともに徐々に排水が進行し,含水比の低下およびかさ密度の上昇を生じさせる.
     3)締固め試験の結果から,干拓土壌は含水比 51.0%で最大乾燥密度 ρmax/1.07 g/cm3を示す.
     4)非排水三軸圧縮試験の結果から,不かく乱土壌はかく乱土壌に比べて高い強度を示す一方,軟化現象のような不安定な力学挙動を呈する.その一因は,不かく乱土壌は構造が発達しているためと考えられる.これより,実圃場における干拓土壌の力学特性評価には土壌構造の考慮が必要である.
  • 平成23年度日本農作業学会秋季大会報告
  • 平成23年度日本農作業学会北陸支部会開催報告
  • CIGR国際シンポジウム2011開催報告
  • テーマセッションの記録
    • 平成22年度春季大会「農作業を快適にする省力軽労化生産技術開発の現状と展望」 (相澤正樹)
    • 農地を“再生”して,新“みずほの国”づくりを (塩谷哲夫)
  • 本会記事Ⅱ
    • 会務報告
    • 日本農作業学会平成23年度第3回常任幹事会議事要旨
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 第48回通常総会・第47回講演会プログラム
  • 編集後記

第46巻 2011年(平成23年)発行

第46巻第4号(通巻第149号) 平成23年12月(オンライン版:平成24年6月)

  • 巻頭言
    • 特集記事「口蹄疫問題と農作業技術」掲載にあたって (薬師堂謙一)
  • 本会記事Ⅰ
    • 平成24年度 春季大会の開催について
    • 学会Webサイトの移転とデザインのリニューアルについて
  • カレンダー
  • 総説
    • 口蹄疫発生後の埋却に関する課題について:宮崎県(2010年)と英国(2001年)との比較 (西脇亜也・一木美紗)
  • 研究論文
  • ヘアリーベッチとトウモロコシの輪作による窒素収支の改善【英文】 (モハマド ザリフ シャリフィ・松村昭治・伊藤正浩・平澤 正・小松崎将一)
    摘要
    窒素肥料を使用せずにトウモロコシ生産を行う栽培体系の確立を目的として,ヘアリーベッチ(HV)との輪作を検討した.
    試験区として「HVすき込み区」,「HVマルチ区」,「施肥区」および「対照区(無処理)」を設けた.2007∼2009の3年間,秋冬期にHVを栽培し,これを5月上旬に畑地に還元して飼料用トウモロコシを栽培し,HVによる窒素供給量およびトウモロコシの乾物生産量·窒素吸収量を調べた.その結果,以下のことが明らかになった.
    1)冬期にヘアリーベッチを栽培することにより,260∼300 kg ha-1の窒素を土壌に供給することができた.後作トウモロコシには130∼150 kg N ha-1の無機態窒素を供給できると推測された.
    2)開始後2∼3年目には明らかに両HV栽培区でトウモロコシの乾物生産量が高くなり,施肥区に匹敵した.乾物生産量が25 Mg ha-1に達したときの窒素吸収量は330∼400 kg N ha-1であり,この収量レベルにおいてHVにより最大で40%をまかなえると試算された.
    3) HV栽培区と対照区におけるトウモロコシの窒素吸収量の差は1年目は20∼25 kg ha-1であったが,2年目には100∼140 kg ha-1,3年目には40∼50 kg ha-1となり,変動はあるもののHVが重要な窒素源となりうることが確認された.
    4)「すき込み」と「マルチ」とでトウモロコシ収量に差は認められなかった.
  • 研究報文
  • システムダイナミックス手法による稲わら回収モデルの研究 (加藤 仁・金井源太・小林有一・竹倉憲弘・薬師堂謙一)
    摘要
    システムダイナミックス手法により稲わら回収作業のモデルを作成し,太平洋側温暖地,太平洋側寒冷地,日本海側寒冷地での稲わら回収作業における作業可能日数,作業機の稼働日数,必要台数等の解析を行った.
    1)太平洋側温暖地では作業期間3.5ヶ月間(9/1-12/15)のうち作業可能日数は61日間であり,そのうち圃場乾燥後にロールベーラによる梱包および集積拠点への運搬が行われた日数は39日間となった.わらは安定的に回収されるが,回収期間が長期となるため,降雨暴露期聞が長いわらの割合が高い傾向にある.
    2)太平洋側寒冷地では作業期間2.5ヶ月間(9/15-11/30)のうち作業可能日数は38日間であり,同じく梱包,運搬作業が行われた日数は23日間となった.回収作業期間が短期間であるため,降雨の多い年では回収目標値に大幅に達しない場合もあった.回収作業は短期間で集中して行われるため,太平洋側温暖地に比べて降雨暴露期間の短いわらの割合が高い傾向にある.
    3)日本海側寒冷地では作業期間2.5ヶ月間(9/15-11/30)のうち作業可能日数は26日間であり,梱包,運搬が行われた日数は6日間と極めて短かったそのため,作業機の必要台数は他の地域より多い結果となった.高水分回収とすることで梱包・運搬が行われた日数は11日聞に増加し,輸送トラック以外の作業機の必要台数は減少した.
  • テーマセッションの記録
  • 本会記事Ⅱ
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 農作業研究 第44巻 総目次
  • 編集後記

第46巻第3号(通巻第148号) 平成23年9月(オンライン版:平成24年3月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 平成23年度 秋季大会の開催について
    • 平成24年度 春季大会の開催について
    • 東日本大震災に関連した「声」の募集について
  • カレンダー
  • 研究論文
  • 農作業安全教育コンピュータソフトウェアの開発-第2報 乗用トラクタでの春の耕うん作業編の制作- (米川智司・中野 丹・菊池 豊・積 栄・岡田俊輔・石川文武)
    摘要
    乗用トラクタでの春の耕うん作業を対象とした,マウス操作のみで使用できるパソコン用インタラクティブ・マルチメディア農作業安全教育ソフトウェアを開発した.
    本ソフトウェアの本編シーンは,基本・格納庫で・道路走行・ほ場作業・帰宅にグループ化され,計19の質問付個別シーンで構成される.質問付個別シーンでは,計78の質問・解答画面において,1~5点で配点された質問が計98問出題される.結果は総合評価として正答率に応じて5段階にランク付けして示され,作業安全の意識レベルをプレイヤーが確認できる.
    また,プレイヤーのモチベーション維持を目的に,三択式・画像エリア選択式・順序指示式などの多種の質問・解答画面を用いた.さらに,解答が正答または誤答の場合には,次の画面に移る前に,解答内容を再現した計64本の音声付動画CGを流して,疑似体験の臨場感を高めた.なお,プレイヤーの安全意識をより高めるために,事故を再現した誤答時に流れるCGには,現実離れしない程度にオーバーアクションな表現を意図的に用いた.
    本ソフトウェア頒布数の80%は,普及センターや農協関係等の団体であり,安全講習会等での教材としての使用例が多いと推測できる.また,世代間差なく持続的に安全教育効果が現れているとは言い難く,普及への努力とより効果的な安全教育手法の開発が求められている.
  • 研究報文
  • 刈払機使用におけるケガ・ヒヤリハット体験事例調査 (松森一浩・千田敏行)
    摘要
    刈払機によるケガを防ぐための啓発活動に役立てることを目的に,宮城県栗っこ農業協同組合員を対象にアンケート調査を行って作業時のケガやヒヤリ体験の事例を収集し,結果を分析した.
    ケガを防ぐには各種防護用具を装着し,安全など服装を整えて作業に臨むことが重要である.作業中の緊張感を持続させるには,“事前に決めた30分前後の時間で休憩を取る”ことが有効と考える.背負い式刈払機では,キックバック時に生じるシャフト桿の前後方向の移動量制限,および刈払機の動きを制御する操作性に優れるハンドル形状,に関する検証が望まれる.肩掛け式刈払機では,ベルト長さの調整と刈刃安定用アタッチメントの装着が,飛散物発生に及ぼす影響を検証する必要がある.ハンドル形状や取付け位置の可変化は作業者が刈払機に望むことであり,これらがケガの減少につながる可能性を検証するのも有意義と考える.
    作業者には,特徴をもった各種刈払機やアタッチメント,防護用具の存在を知らない割合が高い.一方,製造者には作業者の声が十分に届いてないと推察する.ケガの防止には情報の共有が重要であり,多数の作業者と接する機会のある組織には,両者の間を仲介する社会的使命がある.作業者の健康と安全を守るため,携行式の“事故防止のための小冊子(仮題)”を作成するなど,新たな啓発活動を推進することも求められる.
    傾斜回転目皿式播種機を利用したダイズの高速播種技術-高速播種に対応した傾斜回転目皿の開発- (国立卓生)
    摘要
    現場に普及する傾斜回転目皿式播種機による播種作業を高速化するため,室内の静置条件下において高速播種に適した傾斜回転目皿の特徴を明らかにするともに,高速播種用傾斜目皿を試作し,室内と圃場でその性能を評価した.
    1) 播種穴周速度が同じ場合は播種穴ピッチ円の直径が大きいほど種子繰出し率が高まったが,播種穴ピッチ円の直径を小さくして播種穴周速度を低下させたほうが種子繰出し率がより高まった.
    2) 播種穴ピッチ円の直径を小さくしても穴径が小さいと種子繰出し率が低下しやすかったが,穴径を,供試種子における粒厚の最小値の約倍,または種子の最大径の平均値よりも3~4mm程度大きくすると,種子繰出し率が高く保たれた.
    3) 大粒では平均粒厚より1mm薄い傾斜目皿を,小粒では平均粒厚と同程度の傾斜目皿を使用すると,種子繰出し率が安定した.
    4) 大粒粒播き用の傾斜目皿(穴数16)を試作し,圃場試験において,播種穴周速度20~25cm/s以下,作業速度1.5m/s以下の時,播種粒数が低下しなかった.作業速度は従来の約2倍に達した.播種穴ピッチ20mm程度を目安に穴数を増やすと,さらに,作業速度を速めることができる.
  • 第46回講演会・講演要旨(平成23年7月)
  • テーマセッションの要旨
  • 「東日本大震災に関する緊急集会」開催報告
  • 本会記事Ⅱ
    • 会務報告
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 第47回通常総会・第46回講演会プログラム(延期日程版)
  • 編集後記

第46巻第2号(通巻第147号) 平成23年6月(オンライン版:平成23年12月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
    • 平成23年度 秋季大会の開催について
    • 東日本大震災への対応に関する緊急集会の開催について
    • 東日本大震災に関連した「声」の募集について
    • CIGR国際シンポジウムの企画「農業技術および異文化の交流」について
    • CIGR国際シンポジウムの企画「低コスト・省エネを目指した施設園芸生成の新たなる展開」について
  • カレンダー
  • 研究論文
  • 黒ボク土畑土壌における無機態窒素量とリン酸緩衝液抽出窒素量の違いが化学肥料由来窒素の利用率に与える影響 (加藤 拓・池羽正晴・谷 昌幸)
    摘要
    本研究では,黒ボク土畑土壌において施肥窒素の利用率が無機態窒素量および易分解性有機態窒素量の違いに関連してどのように変動するかについて,15Nトレーサー法を用いて定量的に明らかにすることを目的とした.試験作物はハクサイおよびニンジンとした.ハクサイは施肥15N量と15N吸収量に正の相関を示したが,ニンジンにはその傾向は認められなかった.また,ハクサイおよびニンジンの施肥窒素吸収量に対する栽培前無機態窒素量およびリン酸緩衝液抽出窒素量の影響は認められなかった.化学肥料由来の窒素利用率は,ハクサイで53-88%,ニンジンで4-57%であり,その変動幅は著しく大きかった.各作物の15N利用率と栽培前土壌中の無機態窒素量およびリン酸緩衝液抽出窒素にも関係性が認められなかった.つまり,無機態窒素量および易分解性有機態窒素量の指標として使われているリン酸緩衝液抽出窒素量は,化学肥料由来の窒素吸収量を反映しないことが示された.以上のことから,本研究において化学肥料利用率の変動を予測するのに対し,黒ボク土畑におけるハクサイとニンジンの秋作では栽培前土壌中の無機態窒素量およびリン酸緩衝液抽出窒素量が指標とならないことが明らかとなった.
    短節間カボチャ'TC2A'のセル成形苗機械定植栽培による作業の省力化 (辻博之・村上則幸・杉山慶太・杉戸智子・嘉見大助・大下泰生)
    摘要
    本研究では,放任栽培が可能で,多収を得るには密植栽培を必要とする短節間カボチャ品種‘TC2A’の定植作業において,セル成型苗の利用とその機械定植による省力化を検討した.
     1)セル成型苗人力定植の作業時間は,ポリポット苗の定植の約43%にあたる5.92h・人/10aに短縮され,大幅な省力化が可能であった.
     2)セル成型苗の機械定植時の作業時間は,機械定植に0.84h・人/10a, 苗の補給等に0.34h・人/10a, 定植後の苗の手直しに2.59h・人/10aを要し,総計で3.85h・人/10aとなり,苗の運搬と定植の作業時間は移植機を用いることで人力定植(苗の手直しを含まない)比の約40%に短縮された.
     3)セル成型苗定植栽培の果重収量は,ポリポット苗定植栽培と同等以上であった.
     4)機械定植で手直しを省略した場合,欠株率は2%未満であった.欠株により果数は減少したが,1果重の増加により補償されるため,‘TC2A’の果実収量は欠株率が10%以下では減収しなかった.
     5)以上より,‘TC2A’の栽培では,セル成型苗を定植することで作業時間の短縮が可能となる.機械定植ではさらに作業時間が短縮され,定植後の手直し作業を省略しても,減収のリスクは小さいことが明らかとなった.
    草姿特性の異なるカボチャ品種における収穫作業性の評価 (嘉見大助・村上則幸・杉戸智子・杉山慶太・辻 博之)
    摘要
    草姿および果実特性が異なるカボチャ3品種の果実を収穫調査し,収穫に適した品種特性について調査した.その結果,‘Bush Buttercup’は‘TC2A’および‘えびす’に比べて短時間で収穫が可能であった.その要因として,‘Bush Buttercup’は他品種に比べて株元着果性に優れ,少側枝であることから,果実の発見が容易なことが考えられた.また,‘Bush Buttercup’の果柄が細かったことから,株からの切り離しも容易だったことが推測された.以上から,カボチャの収穫作業の軽労化をはかるには,株元着果,少側枝および細い果柄径などの遺伝的改善が必要であると考えられた.
  • 本会記事Ⅱ
    • 会務報告
    • 日本農作業学会平成22年度第4回常任幹事会議事要旨
    • 会員動静
    • 賛助会員名簿
  • 第47回通常総会・第46回講演会プログラム(延期日程版)
  • 編集後記

第46巻第1号(通巻第146号) 平成23年3月(オンライン版:平成23年9月)

  • 本会記事Ⅰ
    • 日本農作業学会学術賞・学術奨励賞候補者の推薦依頼について
    • 日本農作業学会功績賞候補者の推薦依頼について
    • 平成23年度 秋季大会の開催について
  • カレンダー
  • 平成23年度日本農作業学会学術賞候補者の選考結果について
  • 研究論文
  • 小型軽量チェンソーの開発とその身体負担 (杉下 悠・山下 淳)
    摘要
    本研究は,操作性に優れ,かつ身体負担が小さく,さらに作業能率に優れたエンジンチェンソーの開発を目的とした.先ず,その手始めとして剪定・枝払い作業に用いる小型軽量(排気量18.3ml,最大出力0.65kW,全装備質量2.5kg)チェンソーを開発した(A機).この設計に当たっては,エンジン単体の軽量化,機械の構造,部品配置も考慮した.その結果,標準装備の既存のB機に比して全装備質量で約500g軽量化できた.製品化に当たっては,モニター機調査や鋸断時間等について調査し,B機に比して遜色ない性能を有することを確かめた.また,小型軽量の効果を明らかにするため,スギ材を用いて作業高さ100,150cmと2段階においてA機の枝払い性能を詳細に調べた.被験者の局所的負担として表面筋電図を測定した結果,A機はB機に比して上肢各筋群にかかる負担が軽減できることが示された.作業能率に関しては,機体質量,被験者毎の作業動作および作業姿勢や,エンジン性能が関与することが実験的に検証できた.また,全身的負担として酸素摂取量を測定した結果,150cm程度の作業高さになると機体質量小のA機の軽量化の効果が高くなると考えられた.
    トラクタ直装型培土機によるサトイモの省力培土技術の開発 (杉本光穗・深見公一郎・今園支和・井上英二)
    摘要
    1)20kW級のトラクタに装着しサトイモの畝溝を走行しながら培土作業を行うトラクタ直装型培土機を開発し,培土作業の省力化を図った.
    2)培土機は溝掘ロータリ成形機をベースとして,ロータリづめの形状と配置,ロータリカバー,分草桿の開発改良を行った.
    3)土壌含水比52.3%および57.7%の圃場を22kWのトラクタで作業速度0.20m/s,ロータリ回転数316rpmの条件で培土作業した場合,理論作業量は0.16ha/hであった.
    4)培土機の耕深と培土高さの関係は,土壌含水比35~59%かつ耕深51~166mmで培土高さは34~170mmと直線的に変化し相関係数0.95であった.また,ベース機と比較して約2倍の培土高さを得ることができた.
    5)培土高さ100mmを得るためには変化量を考慮し耕深149mmが必要であったが,培土機で十分対応でき所期の目標を達成した.
    6)新栽植様式による栽培の収量は慣行栽培より少なく無培土栽培と同等であった.しかし,市場の需要が高いMサイズ以上のいもや丸いもの重量割合が無培土栽培より高く,慣行栽培と同等であった.
    7)乗用トラクタでの追肥・培土作業が可能となり担い手の高齢化への対応した軽労化作業の見通しを得た.
    簡易に設置できるドリフト防止障壁の開発 (国本佳範・廣野公志・平浩一郎・谷川 元一)
    摘要
    両端を螺旋杭に固定した高張力プラスチック線に下垂させた防虫ネットを,鉄パイプで持ち上げ,ネット下端を鉄パイプに固定することで,簡単に,安い経費で脚立などを使わずに設置できる簡易なドリフト防止障壁(簡易型障壁)を開発した.6名の被験者によりそのドリフト防止効果,設置作業時間について,露地ナスの防風ネットで利用されている設置法(従来型障壁)と比較した.併せて,資材経費を算出した.
    1.簡易型障壁の20mあたりの設置作業時間は607秒で,従来型障壁の938秒に比べ有意に短くなった.また,撤去時間も短くなった.
    2.設置・撤去作業中の心拍数は,両障壁間で有意差はなかった.
    3.ドリフト防止効果は両障壁で有意差はなかった.
    4.資材経費は20mあたり,従来型障壁が17,320円であったが,簡易型障壁は12,912円と25%程度低くなった.
    5.簡易型障壁設置時に,ネットを固定する器具の強度が弱い,高張力プラスチック線が巻き取りにくい等の問題点があった.
  • 平成22年度 日本農作業学会秋季大会報告
  • 本会記事Ⅱ
    • 会務報告
  • 第47回通常総会・第46回講演会プログラム
  • 編集後記
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